The National

High Violet

High Violet

おそらく今もっとも海外と日本で温度差のあるバンド、The Nationalについて書きたいと思います。彼らが2010年5月にリリースした最新作『High Violet』は海外で軒並みスマッシュヒットを飛ばしているにも関わらず、日本では雑誌のちょっとしたインタビューが組まれる程度という不遇の扱い…。

メンバーはDevendorf兄弟とDessner兄弟の楽器隊にMattが唄うという5人編成です。

Matt Berninger (Vo.)
Scott Devendorf (Ba.)
Bryce Dessner (Gt.)
Aaron Dessner (Gt.)
Bryan Devendorf (Dr.)

1991年にMattとScottがシンシナティ大学で出会いバンドを結成(Pavementのコピーみたいなバンドをやってたらしい)。その後NYに移動してBryanとその友人のDessner兄弟が加入して1999年にThe Nationalを結成。2001年にデビューアルバムの『The National』を自分たちのレーベルからリリースし、その後2003年に2ndアルバム、2004年にE.Pを1枚リリース。この後The Walkmanとツアーをしたりとジワジワと名を広めて、UKのベガーズ・バンケット・レーベルと契約し3rdアルバムの『Alligator』をリリース。この評価がかなり高く、ピッチフォーク・フェスやレディング・フェスにも出演。同時期にClap Your Hands Say YearやEditorsとツアーを行っています。
彼らにとって転機になったのは2007年、4ADからリリースされた4thアルバムの『Boxer』でしょう。各紙絶賛!TVタイアップしまくり!果てはバラク・オバマ(現)大統領の選挙CM曲としてFake Empireが採用されるなどして一気に知名度アップ!Modest Mouseと共にR.E.M.の2008年世界ツアーのオープニングアクトを務めるなどもはやUSインディーの枠で語れないほどの大物感を醸し出すようになります。で、満を持してリリースされた5th『High Violet』ですよ。USチャート3位、UK5位等々、商業的にも成功している素晴らしいアルバムです。

The Nationalの一番の特徴はなんといってもマットさんの渋いバリトンヴォイス。
ちょっと聴いて
「あぁ、Joy Divisionっぽいね」
とか
「Editorsに似てる」
と言う人が多いですが、

「正直、全然、違う。耳を掃除して、出直してきやがれ」

と言いたいですね。(私も出直しました)

彼らを彼らたらしめているのはアメリカならではの広大で(でもU2みたいにただ広いだけじゃねぇ!)、でも何処かしら土埃や排気ガスの匂いがするような曲。どこまでいっても男臭く硬派。でも儚げ。ダンスフロアにいっちゃった軟派なEditorsなんかと一緒にすんじゃないよ!
最新作でも『Bloodbuzz Ohio』と曲名に自分たちの出身州名を冠するなど、ちょっとした田舎くささと華やかな都市の裏にあるもの哀しい雰囲気が同居しているよう。
加えて、ドタバタと手数の多いドラム、やけにアンビエントなギター、まったく主張しない(!)Scottのベース、ピアノとホーンを多用したゴォジャスなアレンジが相まって唯一無二の存在です。特に最新作『High Violet』は必聴ですよ。

動画を紹介しておきますね。マットさん、渋すぎて男でも惚れるわ!




追記:このスコットに対するインタビューが非常に興味深い。マットさん結婚してるんか!しかも奥さんと一緒に歌詞作ってるとか驚愕!あと作曲に関してはスティーヴ・ライヒなんかの影響もあるとか、ないとか。
The National's Scott Devendorf: The Cream Interview